乱暴に備品が置かれた倉庫の一角
そこに脚がたたまれた長机が自分に与えられた寝具だった


何の疑問も持たずにそこに横になる
39年間、ここで夜を過ごしている


溜飲が下がる cast:紅葉




兵器機関の総括から執拗に
家庭を家を持てを口やかましく言われ続けている

確かに今となっては自分の部屋や寝具を揃える事ができるのだろうが
今更という感情が面倒だという思考に変換されたまま今に至っている


だが今夜は
とても気分がいい

それこそこれを機に
折りたたみのベットでも買ってみようかと、ならば間接照明も一緒に揃えてみようかと
今までどうでもよかったで終わっていた身の周りに
積極的に取り組めるぐらいに視野が明るい




鮮明に脳裏に咲き続けるのは
竜が人を燃やす映像



それを見た瞬間に思い出したのだ
昔、秘めていたあの願いを
あの望んでいた映像を







「ざまあみろ」




その黒い感情を言葉にして吐き捨てた



そうだ
もう諦めていたけれど
大嫌いだった


皆、消えてしまえと願っていた




自分の存在を知らしめるために与えられていた化物図鑑

その図鑑の表紙を飾り
その中に描かれているどの化け物よりも
強く、恐ろしく
そして気高い存在であった竜

そんな竜が
ここにいる人間達を消してくれて
自分を解放してくれればと







「…っハハ!いやあ、本当に囚われのお姫様みたいな事を考えていたなあの頃の俺は」
可笑しくて笑ってしまう


人間への呪いを


同時にもう叶わぬまま
風化してしまっていたはずのそれが

あの炎をもって綺麗に昇華されたのだ

「今夜はいい夢見れそうだな」


そして、また明日の業務に備え微睡み始める

あの頃の皆を全て焼き尽くしてくれるほどの
業火の夢を望みながら